こんばんは。「短編集 踊る阿呆に見る阿呆」脚本担当の角砂糖です。
公演が来週土曜日からと迫ってまいりました。
先日ご来場予定の方から「見どころは〜?」と聞かれて、うまく答えられなかった(脚本家…)ので、整理してお伝えしたいと思い、筆を取っております。
今回はオムニバス形式で短編を3本お送りします。
3本は「ひとつの部屋を舞台にした一幕もの」「男女2人芝居」それから「ユリの花」という共通項でうっすらと繋がっております。
Twitterでも申しましたが、私はものを書くとき、花や植物のイメージをお借りすることが多いようです。
意識的にそうしようと思っているわけではないのですが、気がつくと登場人物の名前や重要設定、ちょっとした小道具などに植物が出てきます。
今回は、種類や飾られる場所で大きく意味の変わるユリの花をキーアイテムに据えました。
あらすじでおおよそご推察かとは思いますが、どのようにして登場するか、ひとつ楽しみにしていただければと思います。
では、3編について少し見どころ的なところをお話しします。
長文となりますので、お暇な時間にどうぞ。
短編1:「ハイシンシャ」
いつもの動画の生配信中、マリアの目の前に突然天使・ガブリエルが現れる。
百合の花を差し出して、ガブリエルがマリアに告げたことには…バーチャルアイドル(「銀杏はだれのもの」)、オンライントーク(「ナイルの弊害」・山谷重実作)と来て、今度はライブ動画配信者のお話です。
同時代の作品を書くとき「顔の見えないコミュニケーション」というのが引っかかってくるもので。いや、ライブ配信は、顔自体は見えるんですけども、それは仮面を着けた顔なので。
ちなみに、もともとクォータースターコンテスト(15分の演劇動画コンテスト)のネタとして考えていた作品です。
ライブ配信者のマリアは、毎週金曜日の夜に配信を行なっています。
いつも通り配信に臨むと、突然「天使」を名乗る人物が現れ、彼女の心は大きく乱されることになります。
「マリア」「ガブリエル」「百合の花」なので、あらすじを読んでいただければ、このあとどういうことになるか、お分かりの方もおいでかと思いますので、本筋とはちょっと関係ない話を。
「幸せ」とは何か、と考えたときに、「幸せを感じられる心を持っていること」が幸せなんじゃないかと、ひとつ考えました。
万人が感じる幸せなんてなくて、幸せを感じる人がそこにいるだけなんじゃないかと。
「幸せになりたい」と感じていて、自分は不幸だ、恵まれないと考えている人が、「幸せ」の条件だと考えていることを突然ぽーんと与えられたとしたら、それは幸せなんだろうか。
幸せになれるのは、幸せを受け入れる心を持っている人だけなんじゃないか。
そんなことを考えました。
「ハイシンシャ」は不条理な話、だと思っています。
短編2:「改稿 つぼみ」
兄の葬儀の日。気丈に振る舞う亡兄の妻・雪菜に、陽真はどうしても尋ねたいことがあった。
幻の旗揚げ公演「つぼみ」、いよいよ再演!第11回神奈川演劇博覧会で、空飛ぶペンギンカンパニーとして初めて演劇公演を打ったときの作品のセルフリメイクです。
何が幻なのかと言うと、弊社がビデオ撮影をするようになったのは「つぼみ」の次の「無人島で散歩にでかけたカヤ」からで、映像が全く残ってないんです。
「つぼみ」という作品を改めてみなさんのお目にかけることができて、脚本家として非常に嬉しく思っています。
夭折した兄の葬儀が終わり、兄の亡妻・雪菜を夫婦の家に送り届けた陽真が、涙ひとつ零さず気丈に振る舞う雪菜の姿を見て、思わず気になっていたことを尋ねてしまいます。
それでもはぐらかす雪菜に、陽真は決定的な一言を告げます。
男と、兄の妻。
ふたりの間にいた兄が死んだとき、微妙な感情がどう揺れていくのか。ふたりの物語でありながら、3人の物語なのです。
非常に静かで、繊細な話です。「昼ドラみたいな話」です。
指先の動き、目線の一つにも、目を離さないでいただきたいと思います。
「つぼみ」というタイトル、結構気に入っております。
これもまた花のイメージに仮託しているわけですが、何がつぼみなのか、何のつぼみなのか、想像を膨らませていただきながらご覧いただけるかなと。
再演とはいえかなり手を入れており、登場人物と筋立てが同じだけで、そこに通う心はほとんど別の話になっています。
初演は正直なところを言えばかなりエロティックな要素を先行させて書いていたのですが、今回は陽真と雪菜、二人の心の動きに集中させています。
初演をご覧になった方は(あまりいらっしゃらないかと思いますが)違いを楽しんでいただけるかと思います。初演、もう5年も経つんですなあ。
短編3「犬とバウムクーヘン」
ハナが憧れの先輩・イチロウを監禁してから3年。
時間は、ふたりをそれぞれの心境に導いていた。監禁というワードがあらすじを物々しくしていますが、コメディです。
「恋とはふたりで一緒にバカになることである」という名言もありますが、この物語の二人が恋をしているかはさておき、煮詰まった男女の関係なんて、二人っきりのときはバカでしかありません。
美術の大嶋さんに「シチュエーションコメディですね」と言われ、ぐうの音も出ません。
ハナが会社の同僚の結婚式から帰ると、今日も首輪に繋がれたイチロウが彼女を待っています。
引き出物を整理し、花を飾り、甲斐甲斐しく勤めるイチロウは、ハナが3年前、歪んだ恋心が行きすぎて監禁してしまったのでした。
異常なスタートで始まった二人の関係は、意外と居心地がよく、着地点が見えないままでしたが、ハナは今日こそ、けじめをつけようと考えていて。
前職の上司で、部下が結婚するとバウムクーヘンを贈ってくださる方がいました。結婚式の引き出物でも定番ですよね。
「二人で年輪を刻んでいく」という縁起物なわけですが、腐れ縁の二人にとっては「コイツと年輪刻んでいくのかよ?!」という気持ちも、照れ混じりにあるんじゃないかと思います。
登場人物の「ハナ」「イチロウ」というシンプルな名前は、一見異常に見える二人の繋がりも、関係を見てみるとどこにでもいるバカな男女なんだという趣旨で付けました。
順風満帆に見えるカップルも、とんでもないところからスタートしているかもしれないし、今ちょっとうまくいっていない方々も、大恋愛から始まったかもしれない。そんなもんです、恋をするとはバカになることなので。
3編の最後は、楽しい気持ちで帰っていただきたいと思い、このお話を最後に配置しました。
最後ばかりは「のぞきみ」のシチュエーションを忘れて、笑って見ていただけると嬉しいです。
いかがでしょうか。作品のことは作品で語った方が雄弁ではあるんですが、ちょっとした紹介でした。
お読みいただいた通り、かなりテイストが違った3本です。
あなたのお気に入りが見つかると、とても嬉しいです。
あ、公演当日、上演台本を販売させていただく予定です。
おまけに「つぼみ」の初演版も載っています。
もし作品を気に入っていただけたら、記念にぜひお求めください。
稽古も残り2回。
「のぞきみ」の世界を楽しんでいただけるよう、ラストスパートをかけていきます。どうぞお楽しみに。
空飛ぶペンギンカンパニー
のぞきみ公演「短編集 踊る阿呆に見る阿呆」【脚本】
角砂糖
【演出】
菅原恭子
【日程】
2018年12月22日(土)15時〜/19時〜
2018年12月23日(日)★11時〜/15時〜/19時〜
2018年12月24日(月)11時〜/15時〜
(全7ステージ)
★…一時託児サービスを実施します。詳細はお問合せください。
※いずれも上演開始時間
※開場時間は上演開始時間の30分前から
【会場】
若葉町WHARF
(京浜急行線「黄金町」駅下車徒歩4分、「日ノ出町」駅下車徒歩8分)
https://wharf.site/access【チケット】
前売1,500円
当日1,800円
学生1,000円(高校生以下)
【キャスト】
伊藤慧、菊本亘孝、松原敦、渡邊陽子
(以上、空飛ぶペンギンカンパニー)
佐藤麻美、野中政昭
【回替りキャスト】
22日(土)15時〜 *山之口晋也
22日(土)19時〜 関谷康滋(劇団Q+)
23日(日)11時〜 山内琴実(演劇集団ごっこ)
23日(日)15時〜 *善村彩代
23日(日)19時〜 井上英行
24日(月)11時〜 佐藤高宏(unit-IF)
24日(月)15時〜 佐藤高宏(unit-IF)
*…空飛ぶペンギンカンパニー
【スタッフ】
舞台監督 緑慎一郎(演劇プロデュース『螺旋階段』)
照明 蔵重智(ライト・トラップ)
舞台美術 大嶋智彬
音響 空飛ぶペンギンカンパニー
制作 空飛ぶペンギンカンパニー
【演目】
約20分の短編劇を、オムニバス形式で3本上演します。
ふたりだけの、秘密の空間。あなたも「のぞきみ」しませんか?
短編1:「ハイシンシャ」
いつもの動画の生配信中、マリアの目の前に突然天使・ガブリエルが現れる。
百合の花を差し出して、ガブリエルがマリアに告げたことには…
短編2:「改稿 つぼみ」
兄の葬儀の日。気丈に振る舞う亡兄の妻・雪菜に、陽真はどうしても尋ねたいことがあった。
幻の旗揚げ公演「つぼみ」、いよいよ再演!
短編3「犬とバウムクーヘン」
ハナが憧れの先輩・イチロウを監禁してから3年。
時間は、ふたりをそれぞれの心境に導いていた。
【チケット予約フォーム】
https://www.quartet-online.net/ticket/odorumiruマフラー強い。あったかい
脚本 角砂糖
テーマ : 演劇 - ジャンル : 学問・文化・芸術